2章、西欧漂泊

イタリア(1988年)

ェネチアの歴史は古い。5世紀、ゲルマン民族の侵入でローマ帝国が崩壊寸前の頃、イタリア半島に住んでいた人々が浅瀬(ラグーン)の上に石をつみ町を作り、異民族の侵入を避けて移住したのがヴェネチアのはじまりである。「水の都」の誕生であった。中世には貿易で栄え都市国家の基礎を築き、西のジェノバとともに十字軍遠征の基地にもなった。13〜16世紀にはヴェネチア共和国は東地中海一帯を支配する黄金時代を迎える。東方からもたらされる香料や絹織物、宝石などの交易で商人たちは巨万の富を手に入れることができた。そして「ベニスの商人」が誕生する。

くには協力なサポーター、後援者はいないし、自分流で旅を続けている。自己資金、自己責任を通し、他人さまからの援助を受けたことはない。ただひもつきではないことがぼくの唯一のプライドでもあった。経費、取材費全て会社持ちがほとんどである。ぼくのひとり旅はぼくの個展で買ってくださった資金で続けられているのである。生活力のある芸術家を目指さねば、何も実現しないと思い続けた。ぼくには働き者の妻がサポートしてくれている。これ以上のぜいたくはないのであるから、定住しないで、いつまでも旅人として地球の旅を死ぬまで続けようと決心したのであった。

「さあ、出発だ 新しい世界へ」
「光景よ!旅立ちだ。新鮮な情愛と騒音に包まれて!」
「また見つかった。何か。永遠が。海と溶け合う太陽が。」

ランボーの詩を口ずさむのがここ数日であった。